ダイヤモンド中の電子スピン集団と超伝導磁束量子ビット系で観測されたコヒーレントな量子結合

 仙場 浩一 氏

NTT物性科学基礎研究所




微小ジョセフソン接合を含むアルミニウム超伝導回路を用いた超伝導量子ビットの特徴は原子などのミクロな量子系に比べて、その制御や測定が遙かに容易なこと、cavity QED 実験で必須となる強結合条件もまた容易に実現できることが挙げられる[1]。これらの特徴は、この系が制御装置や測定装置に直接同軸ケーブルで繋げられるほど多数の原子/電子から成る巨視的量子系であることに起因している。量子プロセッサとして期待されている超伝導量子ビットの高い制御性や強結合に基づく高速量子演算の可能性と、原子分子などの自然な量子ビットのもつ優れた量子コヒーレンス性との「いいとこ取り」を目指した ハイブリッド量子系 が近年注目されている。講演では、この分野の研究動向にも言及しながら、日本の研究チームの最近の取り組み(ダイヤモンドの NV色中心スピン集団と超伝導磁束量子ビットとを直接強結合させた最近の実験[2])について紹介したい。

[1]「超伝導回路で共振器量子電磁力学実験が可能に!」 物理学会誌 p.37-41 Vol.64 No.1(2009)
[2] "Coherent coupling of a superconducting flux qubit to an electron spin ensemble in diamond", Xiaobo. Zhu et al., Nature 478, 221-224 (2011). doi:10.1038/nature10462